カテゴリ:お話・リズム遊び・室内ゲーム( 17 )

「スイミー」レオ=レオニ・作・絵 たにかわしゅんたろう・訳


(光村図書:小学2年国語教科書:上巻より)


広い 海の どこかに、


小さな 魚の きょうだいたちが、楽しく くらしていた。


みんな 赤いのに、一ぴきだけは、からす貝よりも まっ黒。


およぐのは、だれよりも はやかった。


名まえは スイミー。



ある 日、おそろしい まぐろが、おなかを すかせて、


すごい はやさで ミサイルみたいに つっこんで きた。


一口で、まぐろは、小さな 赤い 魚たちを、


一ぴき のこらず のみこんだ。


にげたのは スイミーだけ。


スイミーは およいだ、くらい 海の そこを。


こわかった。さびしかった。とても かなしかった。



けれど、海には、すばらしい ものが いっぱい あった。


おもしろい ものを 見る たびに、スイミーは、


だんだん 元気を とりもどした。


にじ色の ゼリーのような くらげ。


水中ブルドーザーみたいな いせえび。


見た ことも ない 魚たち。


見えない 糸で 引っぱられて いる。


ドロップみたいな 岩から 生えている、


こんぶや わかめの 林。


うなぎ。顔を 見る ころには、


しっぽを わすれているほど ながい。


そして、風に ゆれる


もも色の やしの木みたいな いそぎんちゃく。



その とき、岩かげに スイミーは 見つけた、


スイミーのと そっくりの、小さな 魚の きょうだいたちを。


スイミーは 言った。


「出て こいよ。みんなで あそぼう。


おもしろい ものが いっぱいだよ。」


小さな 赤い 魚たちは 答えた。


「だめだよ。大きな 魚に たべられてしまうよ。」


「だけど、いつまでも そこに


じっと している わけには いかないよ。


なんとか 考えなくちゃ。」


スイミーは 考えた。


いろいろ 考えた。うんと 考えた。


それから、とつぜん、スイミーは さけんだ。


「そうだ。みんな いっしょに およぐんだ。


海で いちばん 大きな 魚の ふりを して。」


スイミーは 教えた。


けっして、はなればなれに ならないこと。


みんな、もち場を まもること。



みんなが、一ぴきの 大きな 魚みたいに


およげるように なった とき、


スイミーは 言った。


「ぼくが、目に なろう。」


朝の つめたい 水の 中を、


ひるの かがやく 光の 中を、


みんなは およぎ、大きな 魚を おい出した。




光村図書:小学2年国語教科書:上巻には、レオ=レオニさんの、イメージ豊かな挿絵がありました。谷川俊太郎さんの訳も、リズム感があって、いい感じです。ただ、光村図書の国語教科書で学習している2年生の子どもたちには、学校での「スイミー」の学習が終わってから、読み聞かせをするという配慮だけは必要でしょう。その学校の1年生も同様です。

関連ページ

子どもは素話・読み聞かせが大好き「やぎさんふとってデンガラドンのドン」「あめだま」「あとかくしの雪」「白い足あと」「たべられたヤマンバ」「定ちゃんの手紙」「たぬきの糸車」「スイミー」「三年峠」

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by takaboo-54p125 | 2015-12-12 05:13 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

韓国の民話 「三年とうげ」  リ・クムオギ(李綿玉)作                                        (光村図書:小学3年国語教科書:下巻より)


ある所に、三年とうげとよばれるとうげがありました。あまり高くない、なだらかなとうげでした。
春には、すみれ、たんぽぽ、ふでりんどう。とうげからふもとまでさきみだれました。れんげつつじのさくころには、だれだってため息の出るほど、よいながめでした。
秋には、かえで、がまずみ、ぬるでの葉。とうげからふもとまで美しく色づきました。白いすすきの光るころは、だれだってため息の出るほど、よいながめでした。
三年とうげには、昔から、こんな言いつたえがありました。
「三年とうげで 転ぶでない。
三年とうげで 転んだならば、
三年きりしか 生きられぬ。
長生きしたけりゃ、
転ぶでないぞ。
三年とうげで 転んだならば、
長生きしたくも、生きられぬ。」
ですから、みんな、転ばないように、おそるおそる歩きました。


ある秋の日のことでした。一人のおじいさんが、となり村へ、反物(たんもの)を売りに行きました。そして、帰り道、三年とうげにさしかかりました。白いすすきの光るころでした。おじいさんは、こしを下ろしてひと息入れながら、美しいながめにうっとりしていました。しばらくして、
「こうしちゃおれぬ。日がくれる。」
おじいさんは、あわてて立ち上がると、
「三年とうげで 転ぶでない。
三年とうげで 転んだならば、
三年きりしか 生きられぬ。」
と、足を急がせました。
お日さまが西にかたむき、夕やけ空がだんだん暗くなりました。
ところがたいへん、あんなに気をつけて歩いていたのに、おじいさんは、石につまずいて転んでしまいました。おじいさんは真っ青になり、がたがたふるえました。
家にすっとんでいき、おばあさんにしがみつき、おいおいなきました。
「ああ、どうしよう、どうしよう。わしのじゅみょうは、あと三年じゃ。三年しか生きられぬのじゃあ。」
その日から、おじいさんは、ごはんも食べずに、ふとんにもぐりこみ、とうとう病気になってしまいました。お医者をよぶやら、薬を飲ませるやら、おばあさんはつきっきりでかん病しました。けれども、おじいさんの病気はどんどん重くなるばかり。村の人たちもみんな心配しました。
そんなある日のこと、水車屋のトルトリが、見まいに来ました。
「おいらの言うとおりにすれば、おじいさんの病気はきっとなおるよ。」
「どうすればなおるんじゃ。」
おじいさんは、ふとんから顔を出しました。
「なおるとも。三年とうげで、もう一度転ぶんだよ。」
「ばかな。わしに、もっと早く死ねと言うのか。」
「そうじゃないんだよ。一度転ぶと、三年生きるんだろ。二度転べば六年、三度転べば九年、四度転べば十二年。このように、何度も転べば、ううんと長生きできるはずだよ。」
おじいさんは、しばらく考えていましたが、うなずきました。
「うん、なるほど、なるほど。」
そして、ふとんからはね起きると、三年とうげに行き、わざとひっくり返り、転びました。
このときです。ぬるでの木のかげから、おもしろい歌が聞こえてきました。
「えいやら えいやら えいやらや。
一ぺん転べば 三年で、
十ぺん転べば、三十年。
百ぺん転べば、三百年。
こけて 転んで ひざついて、
しりもちついて でんぐり返り、
長生きするとは、こりゃ めでたい。」
おじいさんは、すっかりうれしくなりました。
ころりん、ころりん、すってんころり、ぺったんころりん、ひょいころ、ころりんと、転びました。
あんまりうれしくなったので、しまいに、とうげからふもとまで、ころころころりんと、転がり落ちてしまいました。
そして、けろけろけろっとした顔をして、
「もう、わしの病気はなおった。百年も、二百年も、長生きができるわい。」
と、にこにこわらいました。
こうして、おじいさんは、すっかり元気になり、おばあさんと二人なかよく、幸せに、長生きしたということです。
ところで、三年とうげのぬるでの木かげで、
「えいやら えいやら えいやらや。
一ぺん転べば 三年で、
十ぺん転べば、三十年。
百ぺん転べば、三百年。
こけて 転んで ひざついて、
しりもちついて でんぐり返り、
長生きするとは、こりゃ めでたい。」
と歌ったのは、だれだったのでしょうね。


光村図書:小学3年国語教科書:下巻には、パク・ミニ(朴民宜)さんの、ほのぼのとした挿絵がありました。文章もリズミカルで、いい感じです。ただ、光村図書の国語教科書で学習している3年生の子どもたちには、学校での「三年とうげ」の学習が終わってから、読み聞かせをするという配慮だけは必要です。低学年も、です。

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by takaboo-54p125 | 2015-11-21 05:03 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

 「たぬきの糸車」  岸なみ・作


 (光村図書:小学1年国語教科書:下巻より)


むかし、ある 山おくに、きこりの ふうふが すんで いました。山おくの 一けんやなので、まいばんのように たぬきが やってきて、いたずらを しました。そこで、きこりは わなを しかけました。


ある 月の きれいな ばんの こと、おかみさんは、糸車を まわして、糸を つむいで いました。
 キーカラカラ キーカラカラ
 キークルクル キークルクル
ふと 気が つくと、やぶれしょうじの あなから、二つの くりくりした 目だまが、こちらを のぞいて いました。
糸車が キークルクルと まわるに つれて、二つの 目だまも、くるりくるりと まわりました。そして、月の あかるい しょうじに、糸車を まわす まねを する たぬきの かげが うつりました。
おかみさんは、おもわず ふきだしそうに なりましたが、だまって 糸車を まわして いました。
それからと いうもの、たぬきは、まいばん まいばん やって きて、糸車を まわす まねを くりかえしました。
「いたずらもんだが、かわいいな。」


ある ばん、こやの うらで、キャーと いう さけびごえが しました。おかみさんが こわごわ いって みると、いつもの たぬきが、わなに かかって いました。
「かわいそうに。わなになんか かかるんじゃ ないよ。たぬきじるに されて しまうで。」
おかみさんは、そう いって、たぬきを にがして やりました。
やがて、山の 木の はが おちて ふゆが やって きました。ゆきが ふりはじめると、きこりの ふうふは、村へ おりて いきました。


はるに なって、また きこりの ふうふは、山おくの こやに もどって きました。
とを あけた とき、おかみさんは あっと おどろきました。
いたの間(ま)に、白い 糸の たばが、山のように つんで あったのです。その うえ、ほこりだらけの はずの 糸車には、まきかけた 糸まで かかって います。
「はあて、ふしぎな。どうした こっちゃ。」
おかみさんは、そう おもいながら、土間で ごはんを たきはじめました。すると、
 キーカラカラ キーカラカラ
 キークルクル キークルクル
と、糸車の まわる 音が、きこえて きました。びっくりして ふりむくと、いたどの かげから、ちゃいろの しっぽが ちらりと 見えました。
そっと のぞくと、いつかの たぬきが、じょうずな 手つきで、糸を つむいで いるのでした。たぬきは、つむぎおわると、こんどは、いつも おかみさんが して いた とおりに、たばねて わきに つみかさねました。
たぬきは、ふと、おかみさんが のぞいて いるのに 気が つきました。
たぬきは、ぴょこんと そとに とびおりました。そして、さも うれしくて たまらないと いうように、ぴょんぴょこ おどりながら かえって いきましたとさ。


光村図書:小学1年国語教科書:下巻には、むらかみ ゆたかさんの、ほのぼのとした挿絵がありました。ただ、光村図書の国語教科書で学習している1年生の子どもたちには、学校での「たぬきの糸車」の学習が終わってから、読み聞かせをするという配慮だけは必要です。興味深かったのは、歴史民俗(歴史文化)資料館で、本物の糸車が動くのを見たよという子どもが、


「キーカラカラー キーカラカラー」


「キークルクルー キークルクルー」


と、語尾を伸ばして、いかにも糸が回っているかのように音読していたことです。みんなも、それを真似して、とても楽しい音読になりました。

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子どもは素話・読み聞かせが大好き「やぎさんふとってデンガラドンのドン」「あめだま」「あとかくしの雪」「白い足あと」「たべられたヤマンバ」「定ちゃんの手紙」「たぬきの糸車」「スイミー」「三年峠」

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by takaboo-54p125 | 2015-10-24 05:14 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

ブタが道を行くよ



ブタが道を行くよ 


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ


向こうからクルマが来るよ 


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ


ブタは死ぬのがイヤだから


車をよけて行くよ 


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ




ブタが空を行くよ 


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ


向こうからヒコーキが来るよ 


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ


ブタは死ぬのがイヤだから


ヒコーキをよけて行くよ 


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ




ブタが海を行くよ


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ


向こうから潜水艦が来るよ


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ


ブタは死ぬのがイヤだから


潜水艦をよけて行くよ 


ぶんちゃっちゃ ぶんちゃっちゃ



ボーイスカウト奈良第4団のみなさんが「ブタが道を行くよ」を歌い踊っている様子を、次のアドレスのYouTubeで見ることができます。私たちがしていた踊りとは、メロディーも振り付けも少し違いますが、歌詞はだいたい似ています。ボーイスカウトは伝統を引き継いでおられますから、私たちが変えてしまったのでしょうか。それとも、関東と関西で違うのでしょうか。でも、楽しく踊れるのは、同じです。私たちとは、昭和の終わり頃、埼玉県志木市・竹の子少年団(子ども会活動)指導員サークル(大学生)です。

http://www.youtube.com/watch?v=15UUr1h4Cg8


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子どもが夢中になれる【リズム遊び】(10種類)【絵書き歌】【文字書き歌】【室内ゲーム】(3種類)子どもは【かけ声】が大好き
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by takaboo-54p125 | 2014-12-21 05:19 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

当ブログでは、素話のページで、お話をいくつか紹介しています。元々、静岡県浜松市にある「あすなろ幼稚園」坂本園長先生から紹介してもらった、大阪府八尾市の河部先生をお招きして、素話を八日市市の子どもたちにしていただきました。その時の、子どもたちの輝く表情に驚かされ、その後、見よう見まねでしてみましたが、とうてい、河部先生のレベルまでは到達できていません。それでも、私が素話をする時に、最も気に入っている(子どもたちの反応が楽しいから)昔話を紹介させてください。


「たべられた やまんば」松谷みよ子・文


むかしむかし。さびしい山のお寺に、おしょうさんと こんぞ(小僧さんのこと)がいたそうな。ふたりっきりで いつも くらしていたそうな。


ある日のこと、こんぞは山へ くりひろいに出かけた。行けば行くほど、でかい くりが落ちているもので、もう1つ、もう1つと ひろっているうちに、こんぞは、いつのまにか山のおくへ来てしまったって。


すると、ひとりの ばあさまが、にかっと わらって 立っていた。
「こんぞ、こんぞ。おれはな、おまえの おとうの あねさんの よめに行った先の おっかさんの いもうとだ。つまり、おまえの おばさんだぞい。こんや、くりを いっぺ にておくから、あそびに来いよ」


こんぞは とんで帰って、おしょうさんに話したけれど、
「こんぞ、そりゃ うそだ。その ばあさまは やまんばに ちがいね。行くな、行くな」                                          
おしょうさんは首をふったって。でも、こんぞは行きたくて 行きたくて、                                         
「それでも、おらの おばさんだって言ったもの。行きたい、行きたい」                                 
と言うものだから、おしょうさんは しかたなく 3まいの おふだを くれてねえ、                                                                  
「あぶない時には おふだに たのめ」
そう言って ゆるしてくれたって。


こんぞが山へ行くと、山には ドードー 風がふいていた。でも、こんぞは うれしくて とんで行ったって。
「ばあさま、こんぞが くりっこ くいに来たよ」
「おう、来たか、こんぞ。よく来たな、こんぞ。はいれ、はいれ」                                                        
「さあ、こんぞ、くりこ いっぺ にてあるぞ。くえや」
こんぞは、くった、くった。はらいっぱい くったもので ねむくなってねえ。ころりと ねてしまったそうな。


よなか、こんぞが ふと目をさますと、雨の音がする。その音が、                                      
 こんぞこ あぶねや てんてんてん
 こんぞこ あぶねや てんてんてん
聞いているうちに、こんぞは きみわるくなって、そうっと となりのへやを のぞいてみると、ばあさまが かみを ふりみだし、
 こんぞぁ ねたか にっかにか
 こんぞぁ ねたか にっかにか
と言いながら、ほうちょうを といでいた。


「や、や、やまんばだぁ」
こんぞは がたがた ふるえだしたが、そうだ、と 思ってねえ、                                                                   
「おら、しょうべんしてえ」
と言って、外に出ようとすると、
「なに、しょうべんだあ?こんぞ、にげる気だな」
やまんばは、おびで こんぞを つなぐと、
「さあ、行ってこう!」
おびの はしを持って、ドンと せなかを つきとばしたって。


こんぞは おびを ひきずって べんじょに行くと、大いそぎで おびを ほどき、べんじょの はしらに ゆわえつけてねえ。その上に、おしょうさんにもらった おふだを はって、
「おふだ、おふだ、おらの みがわりに なってけろ」
と言うなり、どんどと にげだしたって。


やまんばは こんぞが おそいので、
「出たか、こんぞ」
と、おびを ぐっと ひっぱったって。すると おふだが、
「まあだ、まあだ」
と こたえたって。
やまんばは、また ほうちょうを とぎはじめたが、どうも おそい。                                        
「出たか、こんぞ」
「まあだ、まあだ」
「出たか、こんぞ」
「まあだ、まあだ」


いつになっても、まあだ まあだと言うものだから、やまんばは おこり出し、                                   
「こんぞ、早く来い!」
と、ちからいっぱい おびを ひっぱったから たまらない。                                            
べんじょの はしらが すぽっと ぬけて、
「まあだ、まあだ」
と言いながら、ふっとんで来た。
「いてててて。こんぞう、にげたな」


やまんばは とびあがり、
「こんぞう、まてえぇ」
と 追いかけた。
やまんばだもの、早い、早い。
「まてえぇ」
「こんぞ、まてえぇ」


こんぞが ふりむくと、やまんばが もう そこまで 来ている。こんぞは、走りながら、おふだを なげて さけんだ。
「ここさ、大きな川 出はれぇ」
そのとたん、ゴーッ。大きな川が みるみる あらわれて、音をたてて 流れ出したって。


やまんばは ザンブと とびこんで、
 なんだ川 こったら川
 なんだ川 こったら川
しゃがしゃが およぎわたると、きしに とびあがり、
「こんぞ、まてえぇ」
かみ ふりみだし おいかけた。
「まてえぇ、こんぞ、まてえぇ」


こんぞは もう ひっしで、三まいめの おふだを ちからいっぱい なげて、さけんだ。
「ここさ、大きな すな山 出はれぇ」
すると、そのとたん・・・・・・。
ドドーン。
みるみる 大きな すな山が つったった。


やまんばは 足をふみならし、
 なんだ山 こったら山
 なんだ山 こったら山
と、はいあがっては くずれおち、また はいあがっては くずれおち したけれど、それでも やまんばの ことだども、
 なんだ山 こったら山ッ!
と、とうとう よじのぼって来たって。


そのまに こんぞは、ようやく おてらに ついて、ドンドンドン。                                            
「おしょうさん、おしょうさん、あけてけれ。やまんばが おいかけて来たぁ」                               
ところが、おしょうさん、ぐっすり ねむっているのか、目をさまさない。                                  
「あけてけれ、あけてけれ。やまんばだあ、あ、あ、声がするうぅ」                                     
ドンドンドン。中では おしょうさんが、ようやく 目がさめた ようすで・・・・・・、                                                 
「なんだあ、やまんばだぁ?ああーっ」
「早く 早く、あけてけれ」
「まて まて、ふんどし しめて」
「早くだ。あれ、やまんばが 見えたが」
「まて まて、きもの きて」
「早くう、早く。ああっ、来たぁ」
「まて まて、おび しめて」


「それ、とだなに かくれろ」                                                     こんぞが かくれたとたん、風のように やまんばが かけこんで来た。                                                                  
「おしょう、こんぞぁ、どう した」
「こんぞ?しらねなあ。それより、もちでも くわんか」                                                  
おしょうさんは、ゆるゆると もちを あぶりはじめたって。そうして、やまんばに もちを やりながら 言ったと。


「ばんば、やまんばは なんにでも ばけられると いうが、ほんとうか」                                                            
「おうさ、ばけられるとも」
「大にゅうどうに なれるかのう」
「おう、見てれ。みんごと ばけて みしょう」
 たかずく たかずく たかずくよ
 たかずく たかずく たかずくよ
やまんばは となえながら、みるみる 大きくなって、ぐわあっと まっかな 口をあけ、じりじり おしょう めがけて おりて来た。


「いや、みごと みごと。だがな、ばんば、なっとうまめには ばけられまいて」                                    
「なんだぁ、なっとうまめだ。ようし」
 ひくずく ひくずく ひくずくよ
 ひくずく ひくずく ひくずくよ
やまんばの からだは、みるみる 小さくなって、なっとうに なった。


「ほ、まめに なったわ、なったわ。よう ばけたな、ばんば。えらいぞ、ばんば」                                        
おしょうさんは、そう言うと、その なっとうを もちに くるんで、ぺろり たべてしまったとさ。はい、ごちそうさま。


(めでたし めでたし)以上です。青森県の昔話と聞きました。小学校の教科書では光村図書の2年国語に「三枚のおふだ」という昔話でのっていますが、文章表現が少々ちがうと思います。当ブログの素話のページに、「たべられた やまんば」を、紹介したい5つめのお話として追加しておきます。よかったら、ご覧ください。

関連ページ

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by takaboo-54p125 | 2014-01-04 05:33 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

次の話は、大阪の河部先生が素話として滋賀の子どもたちにしてくださったお話です。セリフが多いお話です。


【やぎさんふとってデンガラドンのドン】


 あるところに、3びきのやぎの子どもがいました。
それはそれは、仲のいい、とってもかしこい兄弟でした。

 一番下の弟やぎは、やっと角(つの)が出たばかり。
ひづめもまだ小さくて歩くたびに、
コチコチトン、コチコチトン。
だから名前も、コチコチトン。

 真ん中のやぎの角は、かわいい三日月さま。
ひづめの音は少し大きくて、歩くたびに、
カタカタトン、カタカタトン。
だから名前も、カタカタトン。

 一番上の兄さんやぎは体も大きくてすごいもの。
二本の角はヌッとはえ、
先はするどくとんがっていて、まるでやりのよう。
足のひづめも大きく、かたくて石のよう。
歩くたびに、
ダーヂヅーデドーン、ダーヂヅーデドーン。
だから名前も、ダーヂヅーデドーン。

 ある日のことです。
コチ「兄ちゃん兄ちゃん、
   ぼく、うんとうんと太って、
   大きなやぎになりたいな」
カタ「兄ちゃん、ぼくもうんとうんと
   太って兄ちゃんみたいな
   大きなやぎになりたいよ。
   何かいい方法はないかなあ?」
ダヂ「あるともあるとも。あそこを見てごらん。
   向こうの山の青いこと。
   おいしい草がたくさん生えたんだよ。
   あの山へ行って
   おなかいっぱい食べたら大きくなるよ。
   コチコチトンもカタカタトンも、
   兄さんみたいに歩くたびにダヂヅデドンさ」

 そこで、3匹のやぎは山へ出かけて行きました。
コチコチトン、コチコチトン。
カタカタトン、カタカタトン。
ダーヂヅーデドーン、ダーヂヅーデドーン。
ところが、山へ行く途中に谷がありました。
谷には橋がかかっていました。
ダヂ「この橋の下には
   トロルという鬼が住んでいるんだよ。
   そのトロルの怖いこと怖いこと。
   目玉はギロギロ光って皿のように大きく、
   口はカバより大きくて、
   するどい牙(きば)は刀(かたな)のよう。
   いつも橋の下で待っていて、橋を通る
   生き物をつかまえて食べてしまうんだよ」
コチ「えー。兄ちゃん、怖いよ。どうしよう」
カタ「トロルに食べられたら、困るねぇ」
ダヂ「そうだね。食べられないようにするには、
   どうしたらいいかなあ」
3匹のやぎは、角を合わせて相談しました。
ダヂ「そうだ、いいことを考えた。
   トロルは食いしん坊で、いばりん坊だから、
   コチコチトンは、
   『トロルさん、
    ぼくみたいな
    弱虫で小さいやぎはおいしくないよ。
    あとからもっとおいしくて強い
    カタカタトンが来るよ』
    と言えば、きっとトロルは
   『なに?おまえより
    おいしくて強いやぎが来るんだって?
    よし、それならおまえのような
    まずくて弱虫のやぎは
    さっさと行ってしまえ』と言ってくれるよ。
   カタカタトンも同じように、
   『トロルさん、
    ぼくみたいな小さなやぎはおいしくないよ。
    あとからもっとおいしくて強い
    ダヂヅデドンが来るよ』
    と言えば、きっとトロルは
   『なに?おまえより
    おいしくて強いやぎが来るんだって?
    よし、それならおまえのような
    まずくて小さなやぎは
    さっさと行ってしまえ』と言ってくれるよ。」

まず、初めに橋を渡るのはコチコチトンです。
コチ:コチコチトン・・(様子をうかがって)コチコチトン・・。
トロル「だあれだぁ!
    おれ様の橋をコチコチトンと渡るやつはぁ!」
コチ「ぼ、ぼくだよ。小さな小さなやぎのコチコチトンだよ。
   あんまり小さいから、向こうの山へ行って、
   うんと太ってくるんだよ」
トロル「えーい、つべこべ言うな。
    おまえをパクリとひとのみにしてやる」
コチ「トロルさん、
   ぼくみたいな小さいやぎはおいしくないよ。
   あとからぼくよりおいしくて強い
   カタカタトンが来るよ」
トロル「なに?おまえより
    おいしくて強いやぎが来るんだって?
    よし、それならおまえのような
    まずくて弱虫のやぎは
    さっさと行ってしまえ」
コチ:コチコチトン、コチコチトン。
   コチコチトン、コチコチトン。

次に橋を渡るのは真ん中のやぎのカタカタトンです。
カタ:カタカタトン・・(様子をうかがって)カタカタトン・・
トロル「だあれだぁ!
    おれ様の橋をカタカタトンと渡るやつはぁ!」
カタ「ぼ、ぼくです。
   ぼくは真ん中のやぎのカタカタトンです。
   まだまだ小さいから、向こうの山へ行って、
   うんと太ってくるんです」
トロル「えーい、つべこべ言うな。
    おまえをパクリとひとのみにしてやる」
カタ「トロルさん、
   ぼくみたいな小さいやぎはおいしくないよ。
   あとからもっとおいしくて強い
   ダヂヅデドンが来るよ」
トロル「なに?おまえより
    おいしくて強いやぎが来るんだって?
    よし、それならおまえのような
    まずくて弱虫のやぎは
    さっさと行ってしまえ」
カタ:カタカタトン、カタカタトン。
   カタカタトン、カタカタトン。

さあ、最後に橋を渡るのは、
一番大きいダヂヅデドンです。
ダヂ:ダーヂヅーデドーン、
   ダーヂヅーデドーン。
トロル「おっ、こいつはでかくて強そうだ。
    これなら食べがいがあるぞ」
   「だあれだぁ!
    おれ様の橋をダヂヅデドンと渡るやつはぁ!」
ダヂ「おお、トロルか。おれだおれだ。
   一番大きなやぎのダヂヅデドンだ」
トロル「おう、待っていたぞ。
    おまえをひとのみにしてやる」
ダヂ「ようし、かかってこい。
   おれの2本のでっかい角で
   おまえの目玉をグサーッとさし、
   石よりかたい4つのひづめで
   おまえの骨をダーヂヅーデドドドーンと
   こなごなにふみつぶしてやる」
トロル「なんだとー」
ダヂ「えーいっ!グサッ」
トロル「ギャー、目がー」
ダヂ「それっ、ダーヂ、ヅーデ、ドドドドドドーン」
トロル:ドッボーン。
コチとカタ「やったあ。兄ちゃん、すごい」

 こうしてダヂヅデドンはトロルをやっつけて、
谷へ放り込んでしまいました。
コチコチトン、コチコチトン。
カタカタトン、カタカタトン。
ダーヂヅーデドーン、ダーヂヅーデドーン。
3匹は無事に山へ登って行きました。
コチ「兄ちゃん、この草、おいしいね。モグモグ」
カタ「おいしいね。こんなにいっぱい食べちゃったよ」
ダヂ「コチコチトンもカタカタトンも、
   いっぱい食べたなあ」

 3びきのやぎは、
おいしい草をたくさんたくさん食べたので、
よく太ってころころになり、帰って行きました。
あんまり大きく太ったので、
橋を渡って帰る時のひづめの音もすごいもの。
ゴヂゴヂドン、ゴヂゴヂドン。
ガダガダドン、ガダガダドン。
デンガラドンガラダヂヅデドン。
はい、これで
山へ行って太ってきたやぎさんのお話は、
おしまいです。

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by takaboo-54p125 | 2013-12-14 05:03 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

小学校の1~2年生が好むお話です。私も大好きなお話です。3~6年生には、朝自習の視写教材に使わせてもらいました。平仮名の文を見ながら、知っている漢字を使って書くというスタイルなら、何年生でも使える朝自習視写教材になります。5~10分ほどで、どの子も仕上げられる程度に分割して視写させたのを覚えています。学年によって、たしか12~16回分ぐらいに区切ったでしょうか。


【あめだま      にいみなんきち】


はるの あたたかい ひのこと、わたしぶねに


ふたりの ちいさな こどもを つれた


おんなの たびびとが のりました。


 ふねが でようと すると、


「おうい、ちょっと まってくれ」


と、どての むこうから てを ふりながら


さむらいが ひとり はしってきて、


ふねに とびこみました。


ふねは でました。


さむらいは ふねの まんなかに、


どっかと すわっていました。


ぽかぽか あたたかいので、


そのうちにいねむりを はじめました。


 くろい ひげを はやして、


つよそうな さむらいが、


こっくりこっくり するので


こどもたちは、おかしくて 


ふふふと わらいました。


おかあさんは、くちに ゆびを あてて、


「だまっておいで。」


と いいました。


さむらいが おこっては たいへん だからです。


こどもたちは だまりました。


 しばらく すると、ひとりの こどもが、


「かあちゃん、あめだま ちょうだい。」


と、てを さしだしました。


 すると、もう ひとりの こどもも、


「かあちゃん、あたしにも。」


と いいました。


 おかあさんは、ふところから


かみの ふくろをとりだしました。


ところが、あめだまは もう ひとつしか


ありませんでした。


「あたしに ちょうだい。」


「あたしに ちょうだい。」


 ふたりの こどもは、


りょうほうから せがみました。


あめだまは ひとつしかないので、


おかあさんはこまって しまいました。


「いいこ だから まって おいで。


むこうへ ついたら かって あげるからね。」  


といってきかせても、


こどもたちは


「ちょうだいよう」


と だだを こねました。


いねむりを していたはずの さむらいは、


ぱっちり めを あけて、


こどもたちが せがむのを みていました。


おかあさんは おどろきました。


いねむりの じゃまを されたので、


この さむらいは おこって いるのに


ちがいないと おもいました。


「おとなしく しておいで」と


おかあさんは こどもたちを なだめました。


けれど、こどもたちは ききませんでした。


すると、さむらいが、


すらりと かたなを ぬいて、


おかあさんと こどもたちの まえに


やって きました。


おかあさんは まっさおに なって、


こどもたちを かばいました。


いねむりの じゃまを した こどもたちを、


さむらいが きりころすと おもったのです。


「あめだまを だせ。」


と、さむらいは いいました。


おかあさんは、おそるおそる


あめだまを さしだしました。


 さむらいは、それを ふねの へりに のせ、


かたなでぽちんと ふたつに わりました。


 そして、


「そうれ。」


と、ふたりの こどもにわけて やりました。


それから、また もとのところに かえって、


こっくりこっくり ねむりはじめました。

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by takaboo-54p125 | 2013-12-07 05:01 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

『寿限無』と聞くと、子どもたちが長い名前を覚えて、早口で言うのが流行ったのを思い出します。


落語だったと思います。



熊五郎のところに男の子が生まれ、和尚さんに命名してもらいます。


ありきたりの名前では納得しない熊五郎は


「死なない保証つきみたいな、ステキな名前をつけてやってくだせえ」


と無理を言います。


最初の「寿限無」は気に入ったものの、これ1つでは満足できない熊五郎のために、和尚さんは次々と縁起のいい言葉を言っていきます。


すると、熊五郎はどれもこれも気に入ってしまい、


「全部、名前につけちまいます」


と、とんでもなく長い名前になってしまったのです。
その子が大きくなって、友だちの金坊の頭に「こぶ」をつくってしまい、金坊は熊五郎夫婦に言いつけます。


ところが、その子の名前が長すぎるので、事情を説明するだけで時間がかかってしまいます。


おかみさん「あらまあ、金ちゃん、すまなかったねえ。


じゃあ、なにかい、うちの、寿限無寿限無、五劫のすれきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助が、おまえの頭にこぶをこしらえたって、まあ、とんでもない子じゃないか。


ちょいと、おまえさん、聞いたかい?


うちの、寿限無寿限無、五劫のすれきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助が、金ちゃんの頭へこぶをこしらえたんだとさ」


熊五郎「じゃあ、なにか、うちの、寿限無寿限無、五劫のすれきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助が、金坊の頭へこぶをこしらえたっていうのか。


どれ、見せてみな、頭を・・・・・なーんだ、こぶなんざあ、ねえじゃないか」
「あんまり長い名前だから、こぶがひっこんじゃった」




この、「こぶがひっこんじゃった」というのがオチになるという、お話です。


小学校の2~3年生で、お話のプリント(読み仮名つき)を読んであげます。


すると、この、楽しいという意味でばかばかしいお話(それが落語)を、ものすごいスピードで音読する子やら、覚えてしまい暗唱する子やら、適当にメロディーをつけて歌う子やら、どの子も、自分なりに楽しめるから不思議な魅力のお話です。

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by takaboo-54p125 | 2013-06-01 05:09 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

 定ちゃんの手紙                千葉省三・作  
  
はいけい
あにさんさ、手紙だすべと思って、こんで三度目です。三度目の正直っちから、こんどはまちがいなく出します。

一度は、おっかちゃんが、はやり風邪ひいた時、出すべと思ったんです。そん時は、おっかちゃんに「心配かけっからだすな」ってとめられました。二度目は、あにさんの大好きな、背戸の霜降り柿が甘くなったから、食べに来なと出すべと思ったんです。こん時は、あにさんがずいぶんいそがしいっちから、言ってやったって、むだだんべと思ってやめました。新田の勝造に五つくれて、ブンブンごまと取っかえました。あとは、おれひとりで食っちまいました。

ブンブンごまは、とてもよくうなったんですが、どぶん中さ落っことしてから、うなんなくなりました。あにさんが来たら、直してもらうべと思って、しまっておきます。
                                                                      
あにさんは、東京でも、おっきな呉服屋にいるんだっちから、ずいぶんお金ももうかんべ、ね。おれんちは、だんだん貧乏んなっちまう。おれも、早くおっきくなって、あにさんみたいにはたらきたいと思うんです。

おっかちゃんは、からだが弱って、寝てばっかりいます。おとっちゃんは、仕事がひまだもんだから、炉ばたで、たばこすっちゃ、ガチンガチン、炉ぶちをひっぱたいています。おとっちゃんは、この頃、とても怒りっぽくなったんです。おれも、おっかちゃんも、よく怒られます。おら、怒られると、金ちゃんちの崖の下さ逃げてって、ひなたぼっこしてます。あすこへ行ぐと、あにさんと目白取りしたこと思い出します。今じゃ、崖の上の竹やぶが切られて、目白も来なくなっちゃいました。あすこにゃ、あにさんが赤土さ彫りつけた、陸軍大将の絵が、今でも残っています。おれがそのわきさ、兵隊さん二人くっつけました。おれんのも、ずいぶんうまくできたつもりだけれど、よく見ると、まだ、あにさんにゃ、かなわねよな気がします。

おら、おとっちゃんが怒りっぽくなったのも、むりじゃねと思うんです。
                                           
あにさんは知んめが、今年の夏っから、となりに自動車屋ができたんです。そんで、車賃もやすくって速いもんだから、おとっちゃんの車さ乗る人がないんです。
                             
おれんちに使われていた吉公。あれが、自動車の運転手になっているんです。毛糸のハイカラ洋服きて、鳥打ちなんどかぶって、いばっているんです。道で、おとっちゃんの車にあうと、あとから追っこして、きっとふりかえって見るんだって言います。ひまな時は、おれんちの前、行ったり来たりしながら、おとっちゃんに口ひとつかけねんです。よっぱら世話んなって、そんな話ってねえと思うんです。
                                                                 
こないだ、大風が吹いた朝、おれが学校さ出かけべと思うと、外の垣根んとこで、どなり声がするので、急いで出てみたら、おとっちゃんと、吉公が、とっ組みあって大げんかしてるんです。おら、たまげちゃって、どうしていいかわかんなかった。おとっちゃんは、年寄りだもんだから、吉公にかなわねえで、つっとばされて、ころんじゃった。その上さ、吉公がまたがって、ゴツンゴツンなぐるんです。おら、ワアワア泣きながら、吉公の帯つかまえてひっぱったけれど、とてもはなれないんです。そんで、太い薪たんぼひらって、吉公の足、ぶんなぐったんです。そしたら、ポキンと音がして、吉公は、キャアといって、ひっくり返りました。

おれは、急いで家ん中さ逃げこみました。

外じゃ、近所の人が集まって来て、ワイワイ騒いでいました。そのうちに、おとっちゃんが、青い顔して入って来て、おれにはなんにも言わねで、ごろんと炉ばたへ寝ころんでしまいました。

あとで聞いたら、吉公の足の骨がくじけたんだって、警察さ訴えるなんて、大さわぎしたそうです。おら、ずいぶん心配しました。駐在所のよっちゃんが仲よしだから、行って、かんべんしてくれるように頼んでもらうべかとよっぽど思いました。
                                                                       
次の日んなって、源作おじさんが来て、おとっちゃんが、足の療治代出して、仲なおりすることになりました。

おら、おとっちゃんには、貧乏だのに金つかわせて、わりいことしたと思います。そんでも、吉公には、ちっともわりいなんて思えねんです。源作おじさんだって、ずいぶんえこひいきだと思うんです。吉公は足の骨折ったかしんねが、おとっちゃんだって腰ぶって、十日も仕事に出らんなかったんです。おら、あんときのこと考えると、今でもくやしいと思います。

そんでもおとっちゃんは、無事にすんでよかったって、みんなにお礼を言いました。そして、おれにも、
「安心しろ、おれが悪かったんだ。はあ、あんなことしねえかんな。」
と言いました。

このさわぎで、おれは三日も学校を休みました。近藤先生が、心配して来てくれました。おとっちゃんが、そん時の話をくわしくしますと、近藤先生はおれの頭なぜて、
「よしよし、しからないから、明日から学校へ出てくんだぞ。」
と言って帰りました。

次の日、学校へ行ぐと、みんなおれのまわりさ寄って来ました。高等科の生徒まで、集まってきました。そして、
「おめえ、どんな薪たんぼでぶったんだ。」だの
「両方の手でふりあげたんけ、片手でけ。」だの
「いくつぶんなぐった。」だのって聞きます。おれが、そん時の話すると、みんな腹たてて、
「吉公のやろ、ほんとになまいきなんだぞ。こんだ自動車来たら、とおせんぼしてやれ。」
なんて言っていました。

あと二月たつと、おれも尋常科卒業します。みんあ中学さ行ったり、高等科さあがったりしますが、おら、行がれそもないから、そしたら何すべかと考えています。あにさんも考えてください。おれは、商人(あきんど)になるべかと思うんです。紙だの、えんぴつだの、学校道具のいいのは、みんな町から持ってくんだから、こういうの、しょって歩いたら売れると思うんです。近藤先生にも、相談してみべと思っています。

こないだ、学芸練習会がありました。こんでもう、練習会もおしまいなんです。そん時、となり村だの、町からだの、大ぜいえらい人が来ました。

おれは、六年生の級長なんで、出てあいさつさせられました。あいさつがすんで、壇をおりてきがけに、窓のほう見たら、おとっちゃんが、外からジッとのぞいていました。おれは、胸がドキンとしました。おとっちゃんは、誰か今日のお客様のせて、学校へ来てたんです。
練習会がすんで、おれがいちばんしまいになって、学校から帰りかけると、門のとこに、おとっちゃんが、から車ひっぱって立っていました。

「だれか待ってんの。」って聞くと、
「ううん、おめえ待ってたんだ。」って言います。

「そうけ、んじゃ、けえんべ。」
「ああ。」
二人でならんで、帰ってきました。

そうすると、おとっちゃんが、
「おめえ、車さ乗んな。」って言います。

「やだ、おとっちゃんの車さ、乗れっけ」
って、おれがことわっても、どうしても乗れってきかねんです。

しかたがねえから、おれが乗ると、おとっちゃんは、お客様みてえにていねいに毛布(けっと)かけて、ニコニコしてひきだしました。
「おら、わりいようだな。やだなあ。」
って言うと、よけいおとっちゃんは元気だして、
「ハイヨ、ハイヨ。」なんてかけて行ぐんです。みんなが見てんのもかまわねで、おれを乗せたまんま、とうとう、うちまで来ちゃって、
「ヘイ、おかえり。」
って言うんで、おれはまっ赤んなって、わらいながらとびおりました。あとで、                                             
「あんなことしちゃ、やだなあ。」って言うと、
「おめえ、今日のあいさつ、うまかったなあ。おら、何かごほうびやりてえんだが、なんにもねえから、車さ乗せてやったんだ。」
とわらいわらい言いました。

おら、ほんとにいいおとっちゃんだと思いました。

もう日光山はまっ白です。街道は、枯れっ葉が毎日おっかけっこしています。むかいに、おまんじゅう屋の新店(しんみせ)ができました。ひとつ二銭で、とてもおっきなおまんじゅうです。おっかちゃんは、東京にもあんめと言っています。こんだ、あにさんが帰ったらごちそうします。さいなら。

                        木村定吉(さだきち)                                                                                                                                        
東京の兄(あに)さんへ


               「千葉省三童話全集」(岩崎書店)より


卒業する小学校6年生向き(3学期)のお話でしょうか。

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by takaboo-54p125 | 2013-02-08 05:21 | お話・リズム遊び・室内ゲーム

白い足あと             神戸淳吉(こうべじゅんきち)



ゆうべ、また雪がふりました。畑も道も雪でうずもれてしまいました。

「道だか、あざだか、わかんないや。気をつけないと、ころぶぞ。」


 年夫は、まだ、だれも通った人のない雪の道を、一歩一歩ふみこみながら、


うしろの正吉に言いました。


弟の正吉は、こんな深い雪の中を歩くのがうれしいのでしょう。


わざとまっ白になって、雪をけちらしています。


 二人はこれから、雪の積もったゆうべのままの道を、学校へ行くところでした。


「あれっ、この足あと、二郎ちゃんだな。もう学校へ行ったんか。早いなあ。」


お地蔵さまのある曲がり角まできた時、正吉は白い足あとを見つけて言いました。


わらぐつで歩いたらしい白い足あとが、二郎の家の方からついていたからです。


「こんな二郎ちゃんがあるかい。二郎ちゃんのおじさんだろ、きっと。」


 年夫はそう言いながら、足あとを見て行くうちに、急に笑い出しました。


その足あとの人が、雪に足をとられたらしく、ころんだあとがあるからです。


けれど、ころんでからも、なかなか起き上がれないらしく、


雪の上に手のあとや、おしりのあとが、いくつも 残っていました。


 正吉もそれを見て、年夫といっしょになって、笑い出しました。


 ちょうどそこへ、二郎が急いで追いかけて来ました。


そして、二人の顔を見るなり、すぐにこう言いました。


「ゆうべ、おらんちのとなりの、山田のおばあさんが、肺炎になりかかったんだ。


 そいで、おらんちのお父さんが、急いで先生を呼びに行ったりして、


 夜通し大さわぎだったんだぞ。」


「へええ・・・肺炎って、死ぬのか。あのおばあさん死んだのか。」


 年夫は、目をまるくして、聞きました。


「もう少しで死ぬ所だって。


 でも、雪の中を、先生が来てくれて助かったんだ。


 何本も注射したぞ。おら、見てた。」


二郎は、じまんそうに話しました。


「ふうん、・・・そうか・・・それでわかった。


 さっき、お地蔵さまの所でころんだ人、先生だよ。


 正吉、先生がころんだんだ。」


 年夫はふと、なぞがとけたように笑いながら言いました。


「ああ、あのしりもちは、先生んだね。」


 正吉も、そう言いながら、うなずきました。


「うん、お地蔵さまんとこの、あれだろう。先生のだよ。


 雪がやんでから、一人で帰って行ったから、とちゅうでころんだんだよ。」


 二郎も、いかにも初めから見ていたように言いました。


 その先生は、年夫たちの村の、たった一人のお医者さんでした。


戦争中、東京から、この山の中の村へうつ移り住んで


もう十七、八年、今では七十近くなっていました。


 それでも先生は、どんなにおそくても、必ず病人をみてくれました。


いつもむっつりとして、おせじを言わない先生でしたが、


この村の大人も子どもも、みんな、


先生のお世話にならない者は、いませんでした。


 年夫たちは、先生の、おこったような顔を思いうかべ、


また雪の中を歩いて行きました。


しばらく行くと、二郎がひぇーっと、すっとんきょうな声をあげました。


雪のふきだまりに、また大きく人のころんだあとがあったからです。


「先生、よくころぶなあ。」


「ころんでばかりいるな。」


二郎も年夫も正吉も、先生のころんだあとを見て、涙が出るほど笑いました。


けれど笑っているうちに、だんだん先生がかわいそうになってきました。


 深い雪の夜道を、何度もころびながら、


あのおじいさんの先生は、ちゃんと家へ帰れたでしょうか。


 年夫たちは、急にだまりこくってしまいました。


そして、先生の残していった白い足あとを、たどりたどり、


学校の方へ歩いて行きました。


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