2016年 06月 05日
困った行動をする子は自分自身が困っている子→「存在感」のある教師は「どうしたの?」から「どうしたい?」までの過程を大事にします
気になる子どもに直球しか投げてこなかった教師に対して、もっと多彩な変化球があることを、とてもわかりやすく解説してくださっている本です。
子どもと教師がかみ合わず、結果として、荒れる子どもの心へ「火に油を注ぐ」こととなってしまう生徒指導から、
発想の転換をはかるチャンスが数多く書いてある本なのです。
「行為障害と非行のことがわかる本」小栗正幸・監修(講談社)
目次
1,「困った行動には意味がある」では、「困った行動をするのは困っている子ども」、とあります。
2,「行為障害の背景にあるもの」では、具体的な場面がいろいろ載っています。
4,「適切な支援の進め方」では、具体的な支援のしかたが載っています。
さすがは、少年鑑別所長や医療少年院長などで、少年たちと真正面から向き合ってこられただけあって、めちゃくちゃ説得力があります。
生徒指導主任、いじめ対応教員、クラス担任の先生方、本書を直接読まれることをオススメします。
私は、図書館へ返却した後、すぐに購入してずっと手元に置いてあります。
「どうしたの?」から「どうしたい?」までの過程を大事に
子どもが困った行動をするのは、その子自身が困っているサインだと受けとめたいですね。
そのサインは1つでも、その裏側にはいろんな思いが詰まっているはずです。
疲れ、孤独感、イライラ、不満、怒り、後悔、自責、不安、投げやり、自暴自棄、迷い、救難信号などです(不眠・空腹感・虐待・イジメもあるかも‥)。
だからこそ、
「どうしたの?」
から入ります。
その子のつぶやきを教師がくり返して言ってあげると、その続きをぽつんぽつんとつぶやいてくれるようになります。
その際、その子の課題を探ろうとしないことです(分析や評価はしません。助言もお説教も、です)。
あくまでも、その子を丸ごと受けとめようとする感覚で、心を込めて聴いてあげます。
話をすり替えようとしたら、本題に戻してあげましょう。
そうすると、その子の中では、教師に自分の思いを受けとめてもらえて、もやもやしていた心が何となく落ち着いてきます。
思いを言葉にするうちに、気持ちが整理されてきて、ある瞬間、その子の表情に微妙な変化がフッと現れます。
それは、その子が自ら何かに気づくと言うか、その子自身の中に眠っていたであろう何らかの気持ちが湧いてきた証しだと思います。
その時にこそ、
「どうしたい?」
と問いかけてあげます。
その問いかけが、その子なりの新たな1歩を踏み出すきっかけ(分岐点)になるのではないでしょうか。
そういう子どもと教師の具体的な信頼関係づくりが、その子のトゲトゲした心を洗い流し、
その子が次の1歩を踏み出そうとする勇気とパワーの源泉になるような気がしています。
その子が「聴いてもらえてよかった」と思ってくれたのなら、その子にとっての「はじめの1歩」になったと言えるでしょう。
事情にもよりますが、そこまでで平均30分前後ぐらいでしょうか。
最後は、その子に自己決定を促したいのですが、1人で実行するのが不安でためらっているようなら
「先生に一緒にしてほしいこと(行ってほしい所)あるか?」
と問いかけてみてもいいかなと思いますが、いかがでしょうか。
くり返しになりますが、その子の抱える問題部分だけを取り出すのではなく、その子の気持ち丸ごとの現状を認めてあげようとすることです。
そうやって、自分の思いを聞き手の教師に温かく(手渡すような言葉がけで)受けとめてもらえたと実感できた子どもは、不安だったのが安心感になり
「今、思ったんやけど・・」
と自分で悩みの核心部分に気づき始めます。
そうした教師との温かい関係性が築かれる中で、子どもは確実に勇気づけられます。
こういった支援をおろそかにしない教師こそ、子どもにとって「存在感」のある教師なのでしょう。
この「存在感」が、教師の話を聴く子どもを育てる土台になります。
どの学級にも個別支援を要する子が複数いるので、特別支援教育とは全学年・全学級で進める教育だと心がけておられる担任が多いと思います。
まず、個別支援を認め合える(できる・できないで仲間を見ない寛容さのある)学級の仲間に育てることが、
どの子の自尊感情も低くならない(自分をダメな子だと思わない)ことの分岐点ですので、温かさのあるお手本を教室で見せることが大事でしょう。
この記事も、そういう意味を込めています。
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