「協同的な学び合い(聴き合う学び)」市内の全小・中学校で一斉に取り組む効果【元々、荒れを解決するために始めたら・・学力も著しく向上】

総合教育技術2012年1月号(小学館)40~43ページに鈴木悦子さんの取材された文章が載っています。抜粋して紹介しますので、ぜひ本書を直接お読みください。


『「学び合い」と「ジャンプのある学び」で学力向上・「学びの共同体」の授業‥』                                                       
こんなタイトルでした。牛久市は人口約8万人で、近江八幡市とほぼ同規模(守山市よりやや多い規模)の市で、小中合わせて13校です。


前書きには、こう書いてありました。
『牛久市では、平成17年度から全ての小中学校で「学び合い」(協同的な学習)による授業改善を市をあげて進めてきた。その結果、学力は全国的に見てトップレベルにまで上昇した。それを可能にした「学び合い」の授業とはどんな授業‥』


牛久市は、全国にいくつかある、市内の全小中学校が「学びの共同体」実践校という市です。よく似た名称の他団体「学び合い○○○○○」(マニュアル本)と混同しないように気をつけてください(教師自身が混乱してしまうから)。「学びの共同体」の実践は、マニュアルとか、ノウハウではありません。ですから、ここ1、2年だけでも、牛久市には韓国、中国、インドネシア、シンガポールから教育視察団が訪れているとのことです。


まず、全国学力テストの結果についてでしたが、次のことも書いてありました。                                                 
『それだけでなく、いわゆる「荒れ」もなくなり、いじめの発生件数は‥』


2つめは、【コの字型と4人グループで協同的な学習】でした。                                                                                   
『子どもたちが成長した最も大きい要因は、コの字型と4人グループによる「学び合い」の授業に全校で取り組んだこと‥生徒たちが黒板に向かって机を並べる一斉授業の姿はない。どの教室でも、机をコの字型に並べて生徒が互いに向き合う形と、男女4人組のグループの形、この2つを組み合わせた「学び合い」の授業をしている。
これまでの一斉授業では‥生徒は孤独である。‥わからない生徒は‥黙っている。しかし、「学び合い」の授業では、生徒同士が話し合いながら考え、わからない生徒は「教えて」と友だちに聞きながら解決していける。‥                                                                   
【コの字型】‥友だちの顔がよく見えると同時に、困った時には横の友だちに聞くことができるという、生徒を孤立させない環境づくりだ。‥                                            
【男女4人グループ】生徒たちが一斉に机を持って移動し、男女4人の小グループに分かれる。‥先生は各グループを回って生徒たちの気づきを拾う。                                                   
【コの字型】再び「コの字型」に戻る。そこで先生が発問‥生徒たちは‥自由につぶやく。先生は生徒たちのつぶやきを拾って、さらに考えさせる。                                             
【男女4人グループ】再び4人グループ。先生が各グループを回る時は、教えるのではなくて、同じ目線で話し合いを聴いている。子どもの表情を見て、つまづいている子、黙っている子に話しかけ、孤立した生徒をつくらない。‥                                            
コの字型の学びでは、生徒は先生の言葉をよく「聴き」‥学ぶ動機や、気づきを共有しながら、自由に発言することができる。
男女4人グループの学びでは、4人が対等に話すことができ、仲間はずれが出ないのでわからないことがあっても孤立しない。仲間と語り合って1人ひとりが考え、仲間に「教えて」と聞くことができる。互いに学び合う場所があって、グループで意見をまとめて、誰かが発表するわけではない。これが班学習との違いである。‥先生は、
最初は、できるようにしたい、わからせたい、解かせたいという思いが強くありました。それが、学び合いの授業をするにつれて、子どもが気づいてくれるといいな、気づくきっかけをどうつくろうかというふうに意識が変わりました。                                           
今では生徒たちの声を聴いて顔を見て、気づくためのきっかけがどこにあるかを常に探しながら授業をしています。そして、1人ひとりの表情と、友だちとのつながりを見て、気になる生徒にはすぐ対応するようにしています。                                            
そのとき大切にしていることは、“学べない生徒を学ばせる力を持っているのは生徒である”ということです。友だちと学び合えることが学習意欲を高めるのです
」と語った。』


3つめは、【ジャンプのある学びで学力向上】でした。                                                                               
『学力が上がった理由の1つに【ジャンプのある学び】がある。ジャンプのある学びとは、少し高い課題に背伸びして挑戦する中で学力を育てることである。できる子にも手応えのある高い課題を出し、それをグループで解決していくと、できない子も友だちに引っ張られて何とか解決できるし、できる子も伸びるのである。‥先生は、
「私は授業の前半で目標とした内容を理解させ、後半では、それを使って実生活に結びつける活用の部分でジャンプのある学びをします」と語った。
できる子が教えて、できない子だけが底上げされるのでは困ると言う人がいます。でも、それは違うと自信を持って言えます。実は教えている生徒たちの伸びのほうが大きいのです。できる生徒たちにとっても高い課題をやることで学力が伸びますし、もう1つは人に教えることで、自分の知識が整理されたり、定着したり、伝えるときに論理性が伸びたり、あらゆる力が伸びるのです」と校長先生は強調した。』


4つめは、【学び合いの授業は全校で取り組むことが重要】でした。                                                                    
『‥もともと、いじめ問題や人間関係のトラブルを解決するため、生徒が互いにケアし合い共に学び合う集団をつくることを通じて、授業の中で変えていこうとして「学び合い」が始められた。その結果、学力向上は後でついてきたという。                                           
「学び合いは、何かの力をつける手段ではなくて、そのものが目標です。学び合いのできる子どもに育てることが達成目標になっています。また、学び合いの授業は、1人の突出した先生の授業ではありません。全校が同じ目標を持って実践しなければ成り立たないのです。‥」
「教師が生徒の1つひとつの声をていねいに受けとめているか」                                  
「1人ひとりの学びを保障するためにグループ学習を取り入れているか」                                           
「わからなくて困っている生徒が自ら友だちに教えてと聞くチャンスをつくっているか」
「高い課題を設定し全ての生徒の学びが成立するような学習にしているか」‥。                                       
校長先生は子ども同士の学び合いの意義についてこう語った。                                     
できない子どもは教えてという言葉が言えずに押し黙ってしまいます。だから授業中にすごく苦しい思いをしているんです。でも生徒同士が互いに学べるような環境をつくってあげれば、教えてと言えるようになります。教えてもらうのを待っている子どもは、社会に出ても指示を待つ人間になってしまいます。しかし、教えてと言える子どもならば、社会に出てから誰かに依存しながらも、人とうまく人間関係をつくり、自立して生きていく力を持った人間に育っていくでしょう」』


以上、抜粋ですので、本書を直接読まれることをオススメします。

【2016年追加 この記事を閲覧してくださった茨城県牛久市の方からEメールをいただきました。その方の話によれば、牛久市の全小中学校では、今も市ぐるみの取り組みとして継続・発展しているとのことです。牛久市の学校教育関係者の皆様には頭が下がります。牛久市の小中学校が示してくださったのは、最も難しい取り組み「継続は力なり」そのものではないでしょうか。さらに、その方のブログは、私など足元にも及ばない本格的ブログです。必見ですので、ご本人の了解を得て紹介したいと思い・・・、早速、ご快諾をいただきました。】

http://okuno-no-sato.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-d23c.html

http://okuno-no-sato.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-db4a.html


牛久市のやり方そのもの(全小中学校13校)もオススメしたい理想的な取り組み方です。子どもたちは、小学校から中学校までの義務教育9年間を、「協同的な学び合い(聴き合う学び)」実践校で過ごせるからです。愛知県小牧市、島根県益田市、大分県中津市・別府市など、同様の広がりを感じる市も増えてきました。市内の中学校に広がりを感じるのは、静岡県富士市、山口県宇部市などですが、もっと広がっているのを、私が知らないだけのような気がします。


日本では小学校で約1500校、中学校で約2000校、高校でも約200校が、「協同的な学び合い(聴き合う学び)」を進めているとも聞きます。それは、問題行動などの「荒れ」をなんとかするには、学校ぐるみで取り組む以外に解決策はないからでもあります。そうして、どの実践校でも問題行動や不登校が激減し、その結果、学力が飛躍的に向上している事実を目の当たりにすると、チャレンジしようとする学校が増えていくのも必然的な流れなのでしょう。


もちろん、市全体でなくても、大阪府茨木市の豊川小学校と豊川中学校のように小中連携で取り組むのだって効果は充分大きいと思います。長野県佐久市では望月小学校、望月中学校、県立望月高校までが、校区研みたいにつながって取り組み、校区内の保育園・幼稚園も含めて「望月教育プラットホーム」という地域の組織として連動しておられるのは驚きです。一度、みなさんも検索してみてください。


どうせ・・と、あきらめたり、うらやましがっているだけでは、しんどい後追い指導から抜け出せませんので、日々の子どもと先生の関係づくりから、発想の転換をしてみましょう。先日も、幼稚園の園長先生から、                                                                                                   『今までなら                                                              「できた?」「わかった?」                                                     と聞いていたのを、                                                       「困っていることはないか?」                                                                            と問いかけるようにしてみたところ、子どもたちの反応に変容が見られ、いろいろ答えてきたと報告してくれる担任がいたり、別のクラスでは                                                           「言いたい人」                                                        ではなく                                                             「お友だちに聞いてほしいことはないか?」                                                     と問いかけたら、                                                         「うんていができるようになった」                                                                など、次々と子どもからの発言が聞かれた・・」                                                                  というお手紙をいただきました。「協同的な学び合い(聴き合う学び)」実践校において、大事にされている子どもへの問いかけは、幼稚園でも生かせることがわかりました。それは、先生と子どもとの関係づくりをしなやかにすること、だからです。千里の道も1歩から、ぼちぼちいこか、でいいと思うので、学校・園ぐるみで、ぜひぜひ始めの1歩をふみ出してみましょう。


公開授業を参観させてもらった、ある中学校と高校の校長先生に、                                           「生徒たちが、とても落ち着いていますね」                                                            と言ったところ、お2人(校長先生)から同様の返事が返ってきました。                                           「取り組みを始めた当初は、すごく大変だったのですよ。授業中の私語や、いじめなどの生徒指導面はもちろん、自分の授業スタイルを変えたくない先生方に発想の転換をはかってもらうことのほうが・・。」                                                                      でも、この抵抗感さえ乗り越えたら、子どもたちも先生も、授業崩壊・学級崩壊から、聴き合いながら学び合う教室へと変容していくことを、実践校の先生方は身をもって、肌で感じられたとも、おっしゃっていました。


関連ページ

「協同的な学び合い(聴き合う学び)」⑦市内の全小・中学校で取り組む【目的は荒れの解決→学力も向上】【若い先生を育てる学校】

http://sg2takaboo.exblog.jp/24898331/

にのせましたので、よかったらご覧ください。


by takaboo-54p125 | 2012-02-03 05:48 |