「協同的な学び合い(聴き合う学び)」⑪小学校のチャレンジ【愛知県の小学校】温かい仲間づくり【教室に「ケア」の心を】授業づくり【具体的な「聴き合う学び」とは】

2011年(平成23年)11月25日(金)は、愛知県小牧市立米野小学校の公開授業を参観させていただきました。米野小学校は「学びの共同体」の実践校で、取り組んで6年目と伺いました。学年5クラス・全校児童数900名を越える大規模校です。今回は、時間の都合で、3校時(下学年)45分と、4校時(上学年)の最初15分だけの参観になりました。5教科の公開授業のうち、国語(物語文)の教室を観せてもらいました。


国語:授業(2、3、4年生)の教師と子どもたち


3校時、まず、2年生の「三枚のおふだ」の教室に入りました。前時の場面の音読の後、子どもたちのイスと同じ高さのイスに座っている先生が、ゆっくりと静かに、                                                 
「ギシギシギシ、グツグツグツ・・・ヤマンバ、うれしかったよね」                                                              
と前時のふり返りを確かめられると、子どもたちは口々に、                                            
「うれしかった」
と反応しました。そして、すぐ本時の音読です。セリフの読み方ですが、とても心を込めて音読していました。ここまでで5分でした。そして、各自がワークシートに書き込みを始めたので、また、後半を観せてもらうことにして、教室を出ました。


次に、3年生の「三年とうげ」の教室に入りました。それまで、子どもと同じ高さの目線の位置に座っていた先生が立って、机間支援を始められました。子どもたちは、4人グループで話し合い始めたからです。5分もたたないうちに、先生が、                                                                   
さあ、どんなことを話し合ったのか、聞かせてくれる?」                                                                
と言われ、挙手(「ハイハイ」と言う子はいない)した子どもを指名されました。全てが聞き取れたわけではありませんが、子どもたちの発言はおおよそ次のようなものでした。
「48ページの△△のところで・・・」
「◎◎さんと同じ所で、意見はちがって・・・」
「◎◎ちゃんのに似ていて・・・」
「△△のところだけど・・・」
「◎◎さんが言ってたんだけど・・・」
この子が途中で言えなくなると、先生がちょこっと助け船を出しました。                                                         
「◎◎さん、何て言ってたの?」
そして、先生がようやく言いました。
「『しばらく』って、そういう意味なんやね。前の場面とつなげてくれたね」                                                         
その後、「三年とうげ」の話の中に出てくる「言い伝え」と、主人公トリトルが言った言葉についても、先生から、
「そこ、みんなで相談してみて」
と言われた後の子どもたちは、
「言い伝えは、注意をしてるみたい」
「トリトルの言葉は、注意を、いいことに変えてる」
「トリトルは、注意を、裏返してる」
「ちょっとちがって、トリトルのは、注意の、続きっぽいやつ・・・」                                                             
と、「言い伝え」とトリトルの言葉のちがいを、自分の言葉で話し合っていました。友だちの発言を実によく聴いて、それを受けた発言をする3年生でした。そろそろ、2年生「三枚のおふだ」の教室へ戻ることにしました。


2年生の教室では、「三枚のおふだ」で、便所に行くふりをして逃げようとする小僧と、それを阻止しようと、あれこれ講じるヤマンバのやりとりを話し合っているところでした。どの子もいっしょうけんめい説明しようとし、それをみんながいっしょうけんめい聴こうとしていました。先生が、
このヤマンバは親切なの?」
と問いかけた時は、各グループで子どもたちが顔を寄せ合って真剣に相談している空気に教室がつつまれていました。そして、1人の子が、
「小僧にばれてるって、ヤマンバは気づいてない」
と言うと、
「わかった」
と数人がつぶやきました。そして、別の子が、
「◎◎さんの聞いて、わかったんだけど、ヤマンバは油断して・・・」                                                           
と言うと、
「わかった」
と多くの子が口々に反応しました。このように、1人の発言が周囲にひびき、次の子の発言につながっていく、そんな2年生の教室でした。最後の音読は、多くの子が読みたがりましたが、先生に、
「誰のを聞きたい?」
と問われると、
「◎◎くんの」
と言える2年生でもありました。


4校時、4年生の「ごんぎつね」の教室に入りました。音読は役割読み(3人)でした。どの子も読みたそうにしていました。その後の1人読みは、気持ちを込めて、情感たっぷりに読んでいる声が教室に響いていました。先生の問いかけが印象的でした。
みんなに聴いてほしいことある?」
お互いに聴き合うことができているからこそ、言える問いですよね。子どもたちは、                                                     
「『つまらないな』のところで・・・」
「今、◎◎さんが言ったんだけど・・・」
「それ、△△と書いてあるので・・・」
「△ページにもあるんだけど・・・」
と、聴いてほしい意見の羅列ではなく、発言がつながっていました。当然、発言している子の顔を自然な感じで見ている子どもたちでした。そんな前向きで意欲的な4年生の教室に、もっといたかったのですが、電車の時間があるので、米野小学校を後にしました。


今回、参観したのは、2,3,4年生の3クラスでしたが、共通していたことがいくつもあります。


例えば、どの教室も柔らかでしっとりした空気に包まれ、参観者の私も居心地がよかったこと。どの学年も、子どもたちの表情がステキでした。


また、どの子も学習の中身に気持ちが向いているので、私語がなかったこと。授業中に廊下を歩いている時、各学年、どの教室も落ち着いた雰囲気なのでびっくりしました(学年5クラスの大規模校です)。もちろん、教師が怒鳴って統制する気配は皆無でした。


さらに、友だちの発言を聴こうとするので、45分間、集中力が持続していたこと。下学年ほど、子どもって、授業にたいくつしてくると、頭がゆらゆら動き出すものですが、そういう子がいないので驚きました。新幹線に乗って行った甲斐がありました。米野小学校の先生方、ありがとうございました。


米野小学校の基本的な考え(子どもとどう向き合うか)


そんな学校づくりをされている米野小学校の、先生方が一致して心がけておられることを、まとめてある資料(冊子)がいただけました。「ともに学び合い つなぎ合う 授業の創造 —聴くこと つなぐことを大切にして—」という冊子でした。「『学び合う学び』の基本的な考え」「研究当初の取り組み」とも書いてありました。その中でも、とりわけ、どの学校でも、どの教室でも、すぐに取り組みたい「聴くこと」の具体的な実践を紹介させてください。


「ともに学び合い つなぎ合う 授業の創造 —聴くこと つなぐことを大切にして—」
『学び合う学び』の基本的な考え(研究当初の取り組み)                                 
1,「ともに学び合う授業」とは
2,教師主導の一斉授業との決別
そこには、見えてきたものとして、教師の姿が3つ書いてありました。                          
●「学ばせる」のではなく教え込もうとする気持ちが強く、一人一人の子どもを大切にしていない教師の姿。
●自分の意図する発言にすぐに飛びつく教師の姿。
●自分の計画した指導過程通りに進めようと、子どもの疑問やつぶやきに耳を傾けない教師の姿。
3,ともに学び合う授業の創造
4,聴くこと
そこには、【聴くこと】「日常の中で子ども・教師が意識すること」が13個、書いてありました。


◎まず、教師が一人一人の子どもの声に耳をすます。
◎ていねいに聴く。(教師も子どもも急がない。矢継ぎ早に指名しない。子どもの意見に飛びつかない)
◎相手を受け入れる。
◎どの子のどんな発言も大切に受けとめる。
◎小さなつぶやき、予想外の発言にもしっかり耳を傾ける大切さに気づく。  
◎「まちがい」や「わからない」を大切にする。
◎多様な意見から複雑な「つながり」を見つけ出す。               
◎互いの共通点・相違点から何かを発見しようとする。              
◎意欲を持続させようとする工夫をする。(4人グループ ペア 音読)     
◎いつでも、誰かが話を聴いてくれるという雰囲気をつくる。            
◎テンションを上げすぎず、静かに聴く。
◎話し合いだけが「学び合い」ではないことを理解して子どもたちの活動を見守る。
◎生活の全てが、「学び合い」であるという認識に立った指導を心がける。


さらに、【聴くこと】「授業の中で特に教師が気をつけること」が6つ書いてありました。


◎子どもたちが話し合う場面で教師も子どもと同じ目線で話が聴けるよう、いすに座ることも必要。
◎子どもたちが話し合う姿をひたすら見守ることも必要。           
◎板書・不必要なリボイス(くり返し)で子どもたち同士のつながりを切ってしまうこともあるので注意。
◎自分で発言する喜びよりも、聴く喜びを感じさせ、自然な対話活動が生まれるよう、友だちに向かって静かにゆっくり話すようにさせる。                   
◎用意した意見を言い合う時間を減らし、ゆっくり聴き合いながら話し合う時間を増やす。
◎「他者から学ぶ」謙虚な気持ちを大切にし、教師自身も一人一人の子どもを尊重することを忘れない。


5,つなぐこと
6,ともに学び合う場面づくり
7,質の高い授業をめざした教師の学び合い
8,授業を見る視点・協議の視点
9,研究の成果と課題
8,では、学び合いにふさわしくない言葉が5つ書いてありました。


●「他に・・・」〈前の意見をつながりのないものにする〉


●「なぜ」「どうして」〈国語の場合は理屈っぽくなり、本文を読み味わえない〉


●「わかったか」〈「わからない」「困った」が学びの基本〉


●「発表してください」〈聴くことが忘れられる→聴き合おう、考えようと意識させる〉       


●「さん、はい」〈一斉にそろえることをさす→一人一人のリズムを大切にする〉


以上です。私は恥ずかしながら、すぐ子どもたちに「他にない?」「わかった人?」「発表して」などと言っていたことを思い出しました。かつて「ハイハイ発言」の「意見発表会」のような、見た目は活発そうな国語の授業をして自己満足していた自分が、恥ずかしい気持ちです。


【つなぐこと】


どの学校でも、どの学級でも、すぐに取り組みたい「つなぐこと」については、6つ書いてありました。
5,つなぐこと
(前略)私たち教師が気をつけなければならないのは、発言をしている子どもに気をとられて、発言を聴いている子どもたちがどのような状態にあるかを見逃している時があるということである。研究を進める中で、私たち教師は、活発に発言する子どもたちに授業の展開を頼ってしまっていることが多くあることに気づいた。(後略)


「子どもと子ども 考えと考え 子どもと教材をつなぐ」


◎教師が子どもたちの多様な考えや活動のからみ合いを瞬間的に見極める力を磨く。


◎子どもたちが考えを共有できるようにする。
・教師が子どもたちの学びに寄り添う。
・子どもたちから学ぶつもりで、同じ目線で授業に臨む。
・教材の本質にせまり、教材との出会いを大切にする。
・「うなずき」、「つぶやき」から考えを広げ、それをつなげていく。


◎国語の授業では、本文に戻しながら、つなげる。
・子どもたちの考えがまとまらなかったり、本文から外れていくような状況になったりした時は、音読などをして本文に戻し、考えを確認しながら、つなげていく。     
・本文に戻ることによって、子どもたちは自分たちで今までの意見をつなげたり深めたりして、ねらいに迫っていくことができる。


◎音読を多く取り入れる。
・本文につなげるとともに、新たな気づきを生んだり、場面を進めたりする。
・読み味わうことにつながる。
・読み取ったことを音読で表現する。


◎友だちの意見を真剣に受けとめ、自分の考えと、すり合わせる。                                      
・じっくりと友だちの意見を聴いて、そこに自分の考えを加えながら発言する。
・考えを再構築しながら発言する習慣を身につけさせる。


◎考えをつなぎ、学びを深めるために、グループ活動を有効に使う。                                   
・全体の中では、自分の思っていることをうまく、他の意見とつなぎ合わせることができなくても、グループの中ではそれができる子どももいる。
・そういった子どもの意見をグループの誰かが補ってくれることにより、偏りが減り、つながりに幅ができるようになる。
・グループの中でお互いの考えを聴き合い学び合うことを通して、温かい仲間づくりができる


以上、「聴くこと」「つなぐこと」について、「子どもたちの学びの姿をとらえ、確かな教材研究の上に立ち、学びの価値を知らせ、安心して学べる空間をつくり出す」米野小学校における基本的なこと(国語)の紹介でした。これらは、H19年度から心がけておられる研究当初の取り組みと書いてありましたから、6年目の今は、さらに深めておられることと思います。


「温かい仲間づくり(学級づくり)」とは、何より「授業づくり」があってこそしかも、まず教師が聴くことを大事にしてこそ、さらに、子どもの意見をつないでいってこそ、それも、学校ぐるみで全学級が取り組んでこそ、到達できるということが、実際に米野小学校の各教室を観て、心底「なるほど!」と実感したことです。


来年度もチャンスがあれば、また米野小学校の公開授業を、今度は1年生と5・6年生の授業を観に行きたいと思っています。滋賀県の小学校の先生方にも、自信を持ってオススメしたい公開授業研(3・4校時:全学年公開)でした。


それらを幼稚園の先生方に紹介したところ、園長先生から、


『今までなら「できた?」「わかった?」と聞いていたのを、「困っていることはないか?」と問いかけるようにしてみたところ、子どもたちの反応に変容が見られ、いろいろ答えてきたと報告してくれる担任がいたり、別のクラスでは、「言いたい人」ではなく、「お友だちに聞いてほしいことはないか?」と問いかけたら、「うんていができるようになった」など、次々と子どもからの発言が聞かれた・・』というお手紙をいただきました。


関連ページ


「協同的な学び合い(聴き合う学び)」⑫【協同的な学び】はすでに日本からアジア各国の学校へ広がっていた(現在進行形)+アメリカ合衆国からのアドバイス

http://sg2takaboo.exblog.jp/24898193/




by takaboo-54p125 | 2011-12-25 05:33 | 保育・教育