2011年 02月 16日
子どもの日記はタカラモノ!低学年も高学年も
学級通信で共感し合った日記から
私も教室で子どもたちの日記をのせた「学級通信」を読むのは、朝の会の時でした。
どの子も1年間で、ほぼ同じ回数のせていました。
自分の日記が「学級通信」にのったら、朝の会で子どもが日記を、私がコメントを読むのが、通例でした。
学級通信を書くのが、夜なべ仕事で、印刷は朝一番ですから、朝の会で子どもたちに読んでほしいじゃないですか。
あっきぽい私が、めずらしく15年以上は続けました。
さて、その子は、おとなしい男の子でした。その子が1行読むたびに、教室は大爆笑でした。
それは、決してバカにした笑いではなく、みんな涙が出そうなほど笑ってしまったのです。
まさか、その子が、そんな日記を書くなんて、誰も思ってもみなかったからです。
それに、A男本人も、照れくさそうにしながらも、うまいこと間を取って(爆笑が収まるのを待ちながら)、1行ずつ読んでいってくれました。
B男もにこにこしていました(A男とB男は、ええコンビです)。
私が担任した子どもたちの、数ある日記の中の「最高けつ作」、クラスのみんなに受けたダントツ・ナンバーワンの日記を紹介します。
ウンコ(6年:A男)
給食のあと、ウンコがしたくなった。
学校がおわるまで待ってよ と思った。
待っていた。
したかった。
帰る時、「ウンコしたい」と、B君に言った。
走って帰ろと思った。B君も走ってきた。
にげたら、こけた。
走ったら、よけいウンコがしたくなった。
こけた所もいたいし、ウンコもしたかったので、たまらなかった。
家についた。
やっとできると思って、便所のドアをあけた。
すぐウンコのかまえをした。
でも「ブリッ」と、おならの音がしたら、ウンコがしたくならないようになった。
おならやったら、学校でしたらよかった。
次の日記ものせました。再度、紹介させてください。
F君(6年:G子)
私の左にF君がいた。
そして、次はおぼろ月夜の歌です。
「なのはーなばたけーに・・・」
と歌っていると、横のF君を見ると私の方を見て、私の口が動いているので、F君もうまいこと動かしているのです。
だから私はF君のために前よりもいっそう大きな口で歌った。
それがきいたのか、それに答えてくれたような気がした。
F君もそうやって、人のを見て覚えてきたのかなあと思いました。
F君のために、いっそう大きな口を開けて歌ったG子の心、純粋に美しいと思います。
特別支援の必要なF君は、その頃から、みんなと歌えるようになりました。
次の日記は、つき指をした友だちE子をそっと温かく見守るⅠ子の、さり気ない優しさが伝わってきます。
ほっこりさせてくれる日記です。
つき指(6年:I子)
今日、改めてE子さんの苦労を知りました。
△△スポーツ教室の時、E子さんはできないので、本を読んでいました。
本を読み終わって、E子さんが、
「宿題しようっと」
と言って宿題をやり始めました。
日記帳をひろげて、
「何書こうかな」
とか言いながら書いていました。
えんぴつを持ちにくそうに持って、左手で一生けん命書いていました。
上のページを見ると、先生がたくさん◎をしてました。
E子さんが一生けん命書いているのを見ると、たくさん◎をした先生の気持ちもわかるような気がしました。
子どもたちは、時には、おうちの方に言いたくても言えないことを日記に書いてきます。
それは、子どもの切なる願いなのです。
子どもは、親にこそ認めてほしいのです。
ぼくのいいところ(5年:C男)
C男くんにはきっとお姉さんやお兄さんにはないよいところがあると先生は言った。
ぼくは父や母に聞いた。
「そんなもん知らん」と言った。
ぼくはしょんぼりした。
ぼくは本気にしたくない。
父や母は本気で言ってないと思う。
C男の「本気にしたくない」という哀しい思い、せめてひとつぐらいは、ご両親も答えてあげてほしいですよね。
期末懇談では、母上にC男のことを、ほめまくりました。
C男にその結果を聞くのを忘れました。(しまった!)
ほめられたのに(5年:D子)
学校でほめられた。
先生にもE子ちゃんにもほめられた。
家へ帰って知らせてみた。
お母さんは「うそやー」と言った。
ほんま、うそとちゃう。
国語で先生にほめられたんや。
お父さんが帰って来た。
「今日、学校でほめられたで」と言った。
「そうか」と言った。
E子ちゃんがほめてくれたんや。
なんで、ほめてくれへんの。
めったに、ほめられへんのに。
勉強でほめられたんや。
D子のくやしい思い、せめてたまには、親にほめてほしいと願うのが人情です。
「めったにほめられへんのに」の1文には、ドキッとさせられました。
それは、担任の私から「めったにほめられへん」と言ってるからです。
D子ごめんな。
そのぶん、E子には感謝です。
ありがとな。
子どもの日記を教室で読み合うことに、どの子もOKしてくれたら、どの子も安心できる教室になってきた印です。
クラスだって、山あり谷ありですから、日記はクラスの潤滑油になります。
ただし、子どもの日記を学級通信にのせたり、教室で読んでもらったりする時、今は、子どもの了解(OK)をもらうのが原則です。
最初は、子どもも恥ずかしがったり、警戒したりして、「いや」と言うかも知れません。
でも、そのうちに、この日記は、こういうよいことが書いてあるから、みんなにも聞かせてあげたいんや・・いいか?
と聞いているうちに、1人2人‥
「いいで」という子が出てきます。
そうすると、
「読んでもええで」
という子が増えてきます。
これは、クラスがよい雰囲気になっていくバロメーターでもあります。
だからと言って、決して、みんなの前で読むことを、あせらないでください。
子どもと信頼関係を築くためですから、ぼちぼちでいいのです。
勝手に読んだら、元も子もありません。(これでなくした信頼は取り戻すのがたいへん)
びっくりしたはずや(6年:J男)
K君をびっくりさせたろうと思って、給食の時間、歯みがきカードをかける所にかくれていました。
思ったとおり、K君が通ったので、
「うわあっ!」
と声を出したら、かたをすくめて、すごくびっくりしました。
そして、急いでおどり始めました。
おどりながら笑って、びっくりしたのをごまかしていたので、おもしろかったです。
J男もK男も、2人ともおとなしい子らです。
いたずら心を見せたJ男と、びっくりしたのをおどってごまかすK男が、2人で笑い合っている姿を、
クラスのみんなは、あ然として見ていました(担任の私もその場にいたので)。
2人とも、おとなしい子だと、みんなは思っていたからです。
ですから、J男が日記を読んだ後、教室は大爆笑に包まれました。
かんじんの2人(J男とK男)は、きょとんとしていました。
阿Q正伝(6年:M子)
「阿Q正伝(あきゅうせいでん)?」
『世界の文学』の本の中にそう書いてあるので、言うと、近くにいたS子ちゃんとL子さんがそれを聞いて笑いだしました。
この日記をM子に読んでもらった時も、教室は大爆笑の渦につつまれました。
それは、M子への共感の笑いでした。
M子も、S子も、L子も、3人とも苦笑いしていました。
バカにするのじゃない「共感の笑い=潤滑油」へいざなってくれる2つの日記でした。
親の心、子知らず」とは、昔から言われています。
今はそれにプラスして「子の心、親は知らず」の世の中でもあります。
次の2つの日記は「親の心、子が思う」、そんな日記です。
知ったらしく言ってしまう(6年:N男)
ぼくもこのごろ、口答えをする時があります。
それは、テレビとかマンガとか読んでいる時、
「おい、N男、ちょっと、手伝うて」
と言われて、いろいろ言ってしまいました。
それとか、いっしょに遊んでいる時、負けたら、
「負けたってんのよ」
とかいろいろ言ったりしていました。
そういうふうに言ってしまうと、後から、ああ、言わんかったらよかったな、と思いました。
ねる前にそういうことを言うと、お父さんがちょっと悲しそうだったからです。
言わんとこうと思っても、なんでか言ってしまいます。
そういう時は、なんか、かなんです。
N男は、内心では、とてもお父さん思いだということ、親の気持ちを汲みたいと思っていることがよくわかります。
「かなんです」とは、「いやです」という意味の滋賀県の方言です。
次の、T子の日記も、なんだか、ほほえましくて、いやしてくれる日記です。
散歩(6年:T子)
いつも忙しいお父さんと2人で、畑に行った。自転車で、お父さんの後ろに、私が乗って行った。
行くとちゅう、V君のおばちゃんが、「落ちんときや」と言ってくれた。
私はお父さんに、「よう知ってはるな」と小さな声で言った。
ガタガタの道にはいる前、お父さんが、
「落ちんとけよ」
と言ったので、
「落ちる時は、いっしょに落ちるように、ちゃんと服を持ってるわ」
と話していた。
少しだったけど楽しい散歩だった。
何気ない会話ですが、親子の散歩って、こんなにステキなんだと思わせてくれる日記です。
自転車の2人乗り親子の「おさんぽ」も、ええもんです。
お父さんも内心では、きっとうれしかったでしょうね。
親のヘアスタイルの感想(ステキ!)を、子どもに期待したらあきません。
子どもは率直で、ありのまま思ったことを言います。
お世辞は言いません。
おかあさん(2年:P子)
わたしはおかあさんを見た。
おかあさんは手をこしにあてているので、わたしはなにかなと思った。
そしてちょっとたつと、おかあさんは、「さんぱつ行ってきた」と言って、「なんか言うことない?」と言った。
わたしが、「きたない」と言ったら、おかあさんは、「なんやてー」と言って、おこった。
お母さんは手を腰にあててアピールしたり、「何か言うことない?」と感想を求めたり、P子への期待感が高すぎましたね。
P子はいつでも、どこでも、誰にでも、みごとに正直者なのです。
おとうさん(2年:Y男)
ぼくのおとうさんは、さる年やのに、あたまがちょびっとだけ、はげているんだよ。
おふろのとき、ちょびっとはげてるのに、シャンプーをつかうんだよ。
いっぱいつかうから、すぐなくなるよ。
さる年やのに、という発想がおもしろいですね。
ちょびっとはげてるのに、というのもY男の率直な気持ちなのでしょう。
Y男には、髪の毛が薄くなった人ほど、残り少ない髪の毛を大事にするんだよと教えました。
さんぱつ(2年:U子)
おかあさんは、さんぱつやさんへ行った。
おかあさんが家にかえってきた。
車の音がして外を見てみたら、おきゃくさんと思った。
よく見てみたら、おかあさんだった。
おかあさんのあたまは、みつあみをしたあとみたいに、ふわっと山みたいになっていて、かたまっていた。
おかあさんは、じぶんのかみのけを見て、「しっぱいした」と言った。
U子がお客さんと見間違えるほどですから、最先端の斬新な髪型なんやと、うなずけます。
U子の髪型の書き表し方が、自分なりの言葉で表現していて、楽しいですね。
それにしても、お母さんも、まっこと正直なかたです。
なかなか言えないものですよ。
さんぱつ(2年:Q子)
前、わたしはさんぱつに行きました。
そして、わたしの番でした。
そして、さんぱつの人に、「ぼん、どんな形がいい?」と聞かれました。
わたしは女やのに、なんでやろうと思いました。
でも、女と言いませんでした。
だって、人がいっぱいいたからです。
いくらなんでも、Q子に対して、失礼な散髪屋さんですよね。
竹を割ったように、さっぱりしたQ子が返事できなかったんですから、よっぽどです。
おとうさん(2年:R男)
ぼくは、おとうさんに、たばこやめた方がいいと思った。
でも、「たばこ、やめたら」って言ったけど、まだやめなかった。
「がんになるで」と言った。
やめなかった。
「どうなってもしらんでな」と言った。
やめなかった。
「500円でたばこ買ってきて」っておとうさんが言った。
「200円あげるから」って言ったから、たばこは体にわるいのに、おもわず買ってしもた。
なんでたばこってやめられんにゃろうかと思った。
R男はお父さんに200円で買収されてしまいました。
お父さんの体を心配しているけど、お父さんに200円で口封じされてしまったので、それ以降、R男がつぶやくのは心の中だけです。
小学校2年生の生活科、教室でザリガニを飼っていました。
長い間飼っていると、こまめに世話をしていても、死ぬザリガニが出てきます。
その度にお墓をつくってあげました。そのうちに、子どもたちから、
「かわいそうやで、川へ逃がしたろ」
という声が出て、ザリガニを川へ返すか、返さないかで話し合いました。
最後まで、ザリガニを川へ逃がすことに反対していたのは、一番熱心に世話をしていたA男とB子でした。
二人は、なかなか「うん」と言いません。
そこで、担任は、
「ザリガニも自分の住んでた川で、すきに泳ぎたいと思ってるんとちゃうか」
「A男もとB子も、自分の家が一番ええやろ。ザリガニかて、いっしょやで」
と二人を説得し、やっと二人が納得してくれて、川へ逃がしてやった日の日記です。
アメリカザリガニ(2年:A男)
前いえで1ぴきのメスのザリガニをとった。
2しゅうかんしたらタマゴをうんでいた小さいタマゴをうんでいた。
ほんで、あさ6じごろにおきていつも見ていた。
うんだらどんな赤ちゃんがうまれるかなと、よるねるときも、ゆめの中でもいつも赤ちゃんのゆめを見ます。
1しゅうかんたったとき、やっと赤ちゃんがうまれた。
お母さんザリガニもニコニコしたように見えました。
よかったと思いました。
そしてB子ちゃんとザリガニとあそんだ。
ぼくがつかんだとき、しっぽをパタパタとしました。
水がかおにかかって2人でわらった。
たのしかった。
きょうザリガニをはなすとき、かなしかったからはなせなかった。
とてもかなしかった。
2回目バケツからとるとき、とれなかった。
すごくかなしかった。
なみだがでそうでも、はをくいしばって、なかなかったです。
A男は、入院生活の長かった子です。
ザリガニを、本気で、とことん大事にし、心から愛しんでくれました。
ザリガニ(2年:B子)
きのうA男くんとザリガニとあそんだよ。
ザリガニの水かえをA男くんとしたよ。
たのしかったよ。
A男くんといっしょにザリガニといっしょにあそんだよ。
A男くんがザリガニのもちかたをおしえてくれたよ。
A男くんとC子ちゃんでいっしょに、ひるやすみも水かえをしたんだよ。
A男くんがザリガニのもちかたをおしえてくれたとき
「ちっちゃいザリガニはやさしくもつんだよ」
といってくれたよ。
「大きいザリガニはせなかをもつんだよ」
といってくれたよ。
やさしくいってくれたよ。
うれしかったよ。
A男くんといっしょにザリガニとあそんだよ。
ザリガニのおうちもかえてあげたよ。
A男くんはザリガニをやさしくもってあげてたよ。
A男くんは
「ザリガニがすき 」
といったよ。
A男くんは大きいザリガニもやさしくもってあげてたよ。
A男くんはすごくザリガニがすきだったんだよ。
A男くんはだっぴをしてるザリガニはさわっていなかったよ。
A男くんはやさしくやさしくしていたよ。
たのしかったよ。いちばんたのしかったよ。
A男くんはいいひとだったよ。
うれしかったよ。
B子は、口数の少ない目立たない子です。
A男のザリガニへの優しさを、そして、A男の友だちへの優しさも教えてくれました。
日記帳に貼ったイラスト

元気印のユーモアはクラス全員の潤滑油になる笑いを(非常識な「受け」ねらいは信用をなくします)
http://sg2takaboo.exblog.jp/24898222/
子どもと信頼関係をつくる、子どもとの「信頼関係」を取り戻す【子どもの心に届く担任の言葉①~⑤】
http://sg2takaboo.exblog.jp/24898595/