2010年 08月 18日
教育相談「始めの4歩」で決まります【 保護者と信頼関係を築く初期対応】【引き継ぎの鉄則】
結論を先に書きます。
保護者から相談を受けた時の、先生が対応する「最初のひと言」は、即返答したくても(即返答できる場合でも)、してはいけません。そして、先に終了時刻を決めておくことも大事です(45分後頃に次の予約[なくても]があることを伝えれば、1時間越になりません=相談時間を決めておくことは双方のために重要なことです)。
まず、
保護者が相談してくださったことにお礼を述べ、(信頼度ゼロなら来られません)
保護者のご苦労をねぎらい、(心をこめて)
保護者の子育てのよい点を具体的にほめて、(お世辞はダメ)
保護者の気持ちに共感しながら、(言葉と表情で)
相談に応じていくのが、保護者の心と、手と手をつなぐ子育て相談(教育相談)になり、保護者から信頼してもらえる存在になれるのではないでしょうか。ただし、安易に同調しないことも大切です。
その理由を書きます。
相談している時点の保護者の気持ちは、どんな状態かということに心を配れていたかということです。相談すると言うことは、不安でたまらずオロオロしておられるか、あせってイライラしておられるか、という気持ちなはずです。それを見落として、相談内容にに対する返答だけに集中しないよう気をつけましょう。
つまり、相談をしに来られるということは、保護者はどうしたらいいの?というヘルプを出しながら、同時に、
自分の育児(現在進行形)の苦労をわかってほしい、
自分の育児が基本的にどうなのかを(全否定しないで)認めてほしい
という、相談の裏側にあるヘルプも出しておられるのではないか、ということです。
言いかえれば、どの質問・相談にも、
私の育児の苦労と努力に共感してほしい
という願いが込められているのではないでしょうか。園・学校で、保護者から相談を受けた時の、先生が対応する「最初のひと言」は、即返答ではダメだということです。
最初の結論を、再度くり返しますが、
相談者が相談してくださったことにお礼を述べ、(信頼度ゼロなら来られません)
相談者のご苦労をねぎらい、(心をこめて)
相談者の子育てのよい点を具体的にほめて、(お世辞はダメ)
相談者の気持ちに共感しながら、(言葉と表情で)
相談に応じていくこと、これが保護者対応(初期対応)の鉄則と言えます。(ただし、安易な同調は禁物)
スポンジみたいにいったん吸収してから、応えるという感覚で相手をすることで、保護者自身も子育ての苦労が報われた、相談してよかった、自分の子育てにもいいとこはあったんや、という前向きな気持ちになり、プラスαのアドバイスをくれた先生への信頼感も増すはずです。
と言うことは、大人でもそうですから、「先生・・」と言ってくる子どもに対しても同様ですね。世の中は、社会全体が監視カメラに囲まれています。せめて、子どもと接する時(親から相談を受けた時・同僚から相談を受けた時も)は、共感カメラ目線(上から目線の反対)で応対してあげることが、今の時代の「基本中の基本の姿勢」だと言えるでしょう。
そうすると、保護者のさまざまな反応から、子育て相談があった時の、受け手(相談員や教員)の「心得(心構え)」「保護者への向き合い方(心のよせかた)」みたいなものを、だんだんと感じ取れるようになります。
【転任してきた教師が感じた職員室の違和感】
私がかつて勤務していた大規模校に、転任して来た1人の先生が、当時、時々「この学校には、教師の空気に違和感を感じる」ような意味のことを、ちらっとこぼしておられました。私は同校に10年近く勤務していたので、鈍感になっていたのか、転任して来られた方の気になる「ひと言」をもっと大事に聴く謙虚な姿勢が、自分になかったことを、今、恥ずかしく思います。人事異動によって、新鮮な風を入れてくださったのを、無駄にしてしまいました。ごめんなさい。
と言いますのも、過日、その先生と出会った時、数年ぶりに当時の頃を話題にしました。そして、私が、「先生は、あの頃、何に違和感を感じていたのですか?」と聞くと、その先生はズバリ、「たとえば、放課後の職員室」と言われました。毎日、放課後、職員室の電話(大規模校なので2,3台)は、保護者に電話連絡している担任だらけで、おまけに、出会って話すべき内容も少なくなかったそうです(あ然…)。
たしか、私はその頃は生徒指導担当をしていて、「電話では誤解が伝わります。足を運べば誠意が伝わります。微妙な内容なら、必ず訪宅して保護者と出会って話してください」みたいなことは、職場のみんなに言っていた(書いていた)つもりでしたが、担任の先生方の心には届いていなかったことに気づかされました。私も放課後は、外回りや保護者対応に追われていたというのは、言い訳でしかありません。生徒指導は組織の力で!なんて、偉そうなことを先生方に口では言いながら、私自身が個人技の生徒指導しかできていなかったということです(それも後追い指導ばかりで疲労困憊していたような気もします)。
それに比べて、公開授業を観せていただいた6校(小中高)では、積極的な生徒指導を日々の授業の中で展開しておられました。しかも、学校ぐるみで組織的にしておられることは、各学年各クラスの子どもたちの表情を見れば、一目瞭然でした。以下、関連記事です。
【安心感あふれる教室に変える手立て①②③④】
https://sg2takaboo.exblog.jp/24898386/
私自身は以前、各学年部へ本当の意味でのフォローができず、自分にできていなかったことを言うのも厚かましいのですが、職場の空気をつくるって、改めて、学校ではとても大切にせなあかんと痛切に感じています(後の祭りやけど、反省です)。それを実現している学校を参観しただけに、余計にズシンとこたえました。
【進学先・進級先との「引き継ぎ」で忘れてはならないこと】
年度末が近づいてきますと、卒園式・卒業式の準備であわただしくなりますが、進学先の小学校や中学校との「引き継ぎ」の準備もあります。とりわけ配慮を要する子どもに関しては、具体的に引き継ぐ必要があります。
年度末の忙しい合間を縫っての「引き継ぎ」になりますので、後から「確かに伝えたはず」「そんなの聞いてない」の押し問答(校園種間)にならないためのポイントを挙げてみます。
まず、こちら側も、進学先も、「引き継ぎ」の会議に出席する職員が、年度末の人事異動で転任する可能性もあるので、原則として、どちらも複数人数で「引き継ぎ」会議に臨むことが大切になります。事前に相手側と日時を決める時に、複数人数の出席を申し合わせるのがよいでしょう。当日、1名しか出てこなかったら、「複数同士で引き継ぎする約束だったはずですが・・」と申し出ましょう。校園種間で確実に「引き継ぎ」を実行するためですから、強くお願いしてよいと考えます(人数が少ない場合など特例もあり)。
さらに、進学先の学校からの引き継ぎ会議出席者は、卒園児・卒業生を次年度に担任する確率は低いと心得ておく必要があるでしょう。つまり、進学先の学校内における、新入生個々に関して「配慮を要する事項」の伝達が、しっかりできるかできないかに、全てが委ねられることになるわけです。そうなると、「引き継ぎ」会議出席者は、お互いの氏名を自己紹介することが必須になるでしょう。もし、相手側が名乗らなかったら、その場で出席者の氏名を尋ねて、何月何日、誰と誰に(誰と誰から)、どんな内容を引き継いだのか、メモをしっかり残しておくことが重要になります。
肝心の引き継ぎ内容ですが、この子にはどういう課題があるのか、ということ以上に、この子にはこういう対応を心がけた、という具体的な対応(成功した対応&失敗した対応)を伝えることが、進学先の学校にとっても、何より子ども自身にとっても、プラスとして働く「引き継ぎ」になることを忘れないようにしましょう。そして、2年前には・・、1年前には・・、今年はここまでできたと、その子の具体的な成長の姿を伝えることが、子どもを大事に思う「引き継ぎ」ではないでしょうか。
そして、保幼小連携・小中連携を大事にされている校区では、新年度になって少し落ち着いてから(5~6月頃)、旧担任が進学先の学校を訪問して、新入生のクラスの授業参観をし、放課後に「保幼小連絡会・小中連絡会」をします。そこで、「引き継ぎ」事項に関わって、旧担任と新担任がお互いに意見交換をし、「引き継ぎ」内容に「ずれ」がないかを確認することになります。ここまでやって、「引き継ぎ」が無事できた、と言えます。お互いに忙しいのは承知していますが、あえて言わせてください。形だけの「引き継ぎ」で済まさない校区では、ここまで徹底しておられます。そうしておかないと、子どもにしわ寄せがいったり、保護者との連携がスムーズにいかないケースが必ず出てくるからです。要は「手間」を省かないことです。
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